『零崎人識の人間関係 零崎双識との関係』感想・レビュー

『零崎人識の人間関係 零崎双識との関係』感想・レビュー

「人識くん、忠告しておくよ。決して『呪い名』には――手を出すな」

人間シリーズ完結編。
関係四部作。
人間関係はどれから読んでもいいんですが、個人的に本作は『匂宮出夢との関係』の次がいいかなーと思います。

 

 

裏切同盟の煽りが強すぎた

ハッタリがちょっと強すぎた気がする。呪い名が6人も……ということで、あの手この手で絶望感を煽ってくるんだけど、結局人識ひとりで対処できたっていうね(1人は戦ってすらいないが)。前振りと結末がちょっと一致していないような気がした。十三階段ですら2人しかいなかったとか言われても、ねぇ? その理屈なら6人いたらそれこそ最悪でしょうよ。

1回読む用のネタといった感じで、テイスト的には『十二大戦』に違いかな。相手が呪い名とはいえノリもバトルものに近いし。

一応、零崎双識では勝てなかっただろう敵もいて、そこは上手いというか、この辺の強さ表現は凄く西尾維新らしい。こういうのって脅威の説明なんですよね。そしてそれは絶対的に正しい。作中で強いとされたキャラクターは喩えあっさり退場したとしても強いのである。

 

人識の人となりを見る物語

『呪い名』と相対する理由で、人識の人間性が分かる。兄を守るしかないって思考回路はまさしく合格。まあ零崎には合格者しかいないと思うけど。

戦闘思考力に関しても、らしさが出ていたと思う。真っ向勝負を挑んでこない。戦わずに向かってくる相手に対し、人識がどのように対応していくのか。この辺は推理小説のような要素で構成されていますね。武器が通じない相手、ダメージの共有ギミックなど、どう倒すかっていうのはスキルでは対処できない。なのでバトルはバトルでも頭脳バトルに近い展開が多かった。ジョジョにちょっと似ているかな、この辺は。

 

零崎双識が活躍してない

表紙に対していい加減にしなさいとツッコミを入れたくなる。下手すると、今回一番印象が薄いキャラクター。人識が双識をどう思っているのか、どう感じているのか、そういう視点であればタイトルも間違いではないのだろうけど。

個人的には序盤の曲識『危険信号(シグナル・イエロー)』のやり取りが印象に残った。『危険信号(シグナル・イエロー)』のキャラクター性に関しては、本書で理解したといっても過言ではない。戯言シリーズだけだったら理解は難しいと思うな(一応いーちゃんは的確に説明しているが)。相手によって人格を変える。いーちゃん相手にああだったのは、玖渚友に似させたからということですね。

しかし『危険信号(シグナル・イエロー)』=姫ちゃんと考えると、台詞がフラグ以外の何ものでもない。彼女が死ぬのは運命だったのだろう。いや、バックノズルか。

 

 

文庫版 

ちなみに新書版にはトレーディングカードが入ってました。