『零崎双識の人間試験/西尾維新』感想・レビュー

『零崎双識の人間試験/西尾維新』感想・レビュー

「さあ、零崎を始めよう」

人間シリーズの第1弾。零崎一賊の長兄と、新たに生まれた妹のお話。

シリアスとコミカルのバランスが良い一冊。これは良い西尾維新だ。

 

 

零崎のルーツ

戯言シリーズで人識が登場してはいるんだけど、一賊に関しては分かる人さえ分かれば良いといった読ませ方だったのが、今回は素で分かるようになっていて、そこが見どころの1つ。これを読むと哀川潤が言うところの零崎、石丸小唄が言うところの零崎、零崎人識が言っていた『殺し名』としての零崎の意味がはっきりと分かる。確かにいーちゃんの解釈は正しくはなかった。いや性格には足りてないといったところか。理解が不足していた。そういう意味じゃこれを読んでから戯言シリーズを読み返すのも面白いと思う。彼らが家族の為にどういった行動をするのか、これを読めば全て分かりますよ。

妹キャラである無桐伊織が零崎舞織になる過程もあって、『殺人鬼』とはどういう意味なのか、そこが明確に分かる。ストーリーを使ってのキャラクターの見せ方が上手いし、キャラクター自体もいいよね。軽さと繊細さをあわせ持つ個性。系統は違うけど葵井巫女子に少し似ている。ずば抜けて明るいけど闇がある、みたいな。

 

合格、不合格

『試験』に注目して読むのも面白い。伊織の家族は合格で、早蕨の弟も合格。しかし早蕨の兄は不合格。この違いを考えてみるのも面白い。当然だけど兄の元へ駆けつけた伊織は合格である。

 

まとめ

伝奇ものって感じの内容なんだけど、無桐伊織の明るさ、双識の変態性と相まって非常に読みやすいし面白い。ストーリーの本筋はシリアスだし、出るキャラ出るキャラ死んでいくんだけど、それでも暗くなりすぎないのがいいですね。クビシメロマンチストに近いかな、テイスト的には。

でも双識の『自殺志願(マインドレンデル)』が思ったより微妙だったのは少し残念かな。てっきり鋏ならではの戦闘術があると思ったのに。むしろ分解するし。それじゃもうナイフと変わらないっつーの。まあ鋏が普通の武器に負けるってのは普通過ぎることではあるけどさ。

人識が『戯言』を使うのも良かった。

 

時系列を考えるとクビシメロマンチスト→人間試験→ネコソギラジカル(中)の順で読むのがオススメかな。人識の発言を追ってみると合点がいく部分も多いだろうし。

ちなみに漫画化もされている。非常に良く出来てるのでこちらもオススメ。オリキャラ、オリ展開などがあった上で西尾維新っぽさが残っているし、むしろパワーアップしている部分もある。西尾維新はコミカライズに恵まれていると思うな。

 

 

敵が哀川潤だったら殺されたらダメ。早蕨だったら殺されてもオッケー。この発想が零崎なんだよね。面白い。

漫画版。西尾維新のコメントもあります。