『零崎人識の人間関係 戯言遣いとの関係/西尾維新』感想・レビュー

『零崎人識の人間関係 戯言遣いとの関係/西尾維新』感想・レビュー

「変わりたいと思う気持ちは、自殺だよね」

人間シリーズ完結編。
関係四部作。
最後に読むのがベストだと思ってたけど、『無桐伊織との関係』の前でも良いのかもしれない。

いーちゃんの異常性がもっとも濃く描かれている。客観的な視点の重要性。これを読んだ後で『クビシメロマンチスト』を読み返すのも面白いだろう。

 

 

佐々沙咲視点での哀川潤

今回の主人公は佐々沙咲かな? と思わせるような出だし。でも全然まったく、これっぽっちもそんな事はなかった。彼女に関して深く知ることはできたけど、『分解』したくなる個性と零崎人識が行った連続殺人事件の理由をつなげたかっただけのような気もする。ちなみに沙咲は探偵否定派。この頃の西尾維新ってそういうキャラクターが多いよね。

哀川潤とのやり取りで、彼女の苦労が良く分かる。なまじ凄さを知っているし、性格も掴んでいるから、怒ることもできない。怒る場面を知っていても、それの意味の無さを彼女は知っている。よく分かっている。故に彼女の哀川潤に対しての好感度は下がることないのだ。ある意味ちょっと可哀想な彼女である。

零崎とは実は会っていたということがここで明らかに。彼が殺人鬼であると気付かなかったのは幸運かな。気付いてたら危うかったかも。そういう意味じゃいーちゃんに感謝だ。

 

佐々沙咲視点でのいーちゃん

いーちゃんとの初対面シーンが面白いし、印象が強い。第一印象でどれほどの個性を押し付ける気だ。

『クビシメロマンチスト』ではいーちゃん視点で沙咲への人物像が描かれていて、彼の佐々沙咲評価は高かったのだけど、実は沙咲の方がいろいろと思うところがあったという。そしてその洞察力は正しかった。いーちゃんが他人をどう思っているか、あるいは思っていないか。殺人犯ではないという確信も含めて正しい。彼女は常識的で優秀。そりゃ哀川潤にも懐かれる。

みいこさんとのやり取りがちょっと面白い。沙咲視点だとかなりの変人に見えるんだよね。嫌なことは嫌と言えてしまう強さというか、気ままさというか。いわゆる権力程度では彼女は崩れない。

 

狂ってるいーちゃん

狂ってる、ルナってる。

友ちんと哀川潤の評価。

玖渚友と哀川潤が必死こいて見つけられなかった零崎人識とあっさり出会い、友達になるというのは、やはりアブノーマル。

玖渚機関との関わりも似たような理由で生まれたんだろう。この辺りの異常性はいーちゃん以外が評価しているようなもので、つまりは戯言シリーズよりも人間シリーズのほうがいーちゃんの個性については理解しやすい

 

零崎人識の行動原理

「好きなことをやっている」「好きにやっている」

『やりたいことをやる』と『やりたいようにやる』の違い。

目から鱗。こんなの知ってしまうと人生観変わっちゃうかもしれない。夢を叶えるより、叶えた夢の中で何ができるかの方がよっぽど重要――みたいな。

ともかく人識はやりたいようにやり、そして哀川潤を見つけた。晴れて連続殺人事件は止まったが、実際に助かったのは新たな被害者が出なかったことではなく、人識自身だったようにも思う。

最後の締めも含めて、零崎人識の人間関係――このシリースはきれいに終わった。なのでやはり最後に読むのがオススメかな。

章と章の間には戯言遣いのやりとりがあって、そこも良かった。戯言シリーズを読んだ上での感想だけどね。それが無かったらさして面白くない一冊かもしれない。そしてこれを読むことで戯言シリーズも面白くなる。

 

 

七々見奈波がなにげに初登場かな。魔女シーンはなく腐女子シーンだけがあった。そして今日まで、彼女の魔女っぽい行動は一切でていない。戯言シリーズでのいーちゃんのリアクションは何だったのだろう。苦手そうだったのだが。