『零崎軋識の人間ノック/西尾維新』レビュー
- 2019.02.12
- 人間シリーズ
「かるーく零崎をはじめるちや」
零崎三天王、『愚神礼賛(シームレスバイアス)』の使い手、零崎軋識をフューチャー。
人識、双識、子荻、玉藻などのキャラクターも登場。ちょこちょこ内面が描かれたりと、ファン向けの側面もあると思う。戯言シリーズを読んでた人向けって感じ。
狙撃手襲来
軋識視点で展開したエピソード。彼が人識をどう見ているのかがわかるし、客観的に見た場合の人識のひととなりもわかる。これは軋識が零崎のなかでもスタンダードな存在だから。普通の殺人鬼だからだね。
軋識は殺人鬼としても殺し名としても凄いんだけど、その軋識もまた人識のことを一目置いていて、そこが面白い。
子荻の登場も良い形だった。彼女はクビシメロマンチストで死んだ後のほうが評価が上がる傾向にあるね。ちなみに子荻が最初に接触した零崎でもある。中学生ってことを踏まえると当時からすでにハイスペック。しかもこの時点では零崎の誰も知らない『街(バッドカインド)』のことも知っている。こわっ。子荻ちゃんこわっ。
ちなみに人識が玉藻と出会ったのもこれが初めて。最初から通じるものがあったことが分かって面白い。まあ子荻も玉藻もすでに死んでるんだけどね(読者視点では
竹取山決戦―前半戦― 竹取山決戦―後半戦―
双識と人識の関係がより顕著になるエピソード。人識の為とはいえあっさり誘拐、からの骨折り。どんな兄貴だ。これが理解者だから困る。
その人識が出夢と初めて出会ったのもこのエピソード。本作はとにかく邂逅が多い。ジグザグもそうだし。彼女も名前は出ていたけど初登場はこれかな。まともそうなキャラクター。でもこういうキャラほど苦労するのが人間シリーズ。
謎のメイド仮面(ひでーネーミングセンス)に関しては戯言シリーズでも出てたけど、これほど強いとは思わなかった。接近戦最強って呼ばれるだけのことはある。まあ最強のわけはねーけど。
請負人伝説
哀川潤を再認識。危ないヤツってことを忘れがちなのは戯言シリーズの後半ではその危なさが薄れているからだね。これは戯言遣いが異常だからなのだろう。これも忘れがち。
「困ってる奴を見ると苛めたく――違う、困ってる奴を見ると虐待したくなるんだ」は名言。主人公体質とは思えねーよな。
そして唐突にして突然現れた死神、萌太くん。『街(バッドカインド)』と遭遇してからのやり取りがこの話のキーだった。どちらも似た境遇なのが特徴。話せば気は合っただろうに。タイミングは悪かったといえる。
闇口憑衣もここで登場。彼女の能力は今現在も謎。ただ体力的な制限はあるらしい。
そしてラストには暴君こと友が。はたして彼女はどこまで知っていたのか。『街(バッドカインド)』が零崎ってことぐらいは知ってそうだけど、哀川潤と関わったことはさすがに知らないんじゃなかろうか。
総じて、軋識が主人公で、軋識のことがよくわかる一冊だったんだけど、登場人物が多い上に濃いのが多かった。常識的殺人鬼は相対的に印象が薄くなってしまった。これが長生きの秘訣なのかもしれない。
戯言シリーズのキャラが出るとなんか嬉しいね。西尾維新のキャラクターは魅力があるから登場するだけで面白くなる。
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