【ヲタクに恋は難しい】はヲタクに手厳しい

【ヲタクに恋は難しい】はヲタクに手厳しい

映画はヒドかったそうですが、原作は面白いですよ。

ただ原作は原作でヲタク向けじゃない部分が意外と多い。

BL要素はいいんだけど、理想の男子像がちょっと痛い。まあその男子ってのは作者や腐女子の妄想でもあるから、むしろ成功の秘訣なんだろうけどね。

 

ヲタク要素というより記号的要素での構成

作者には知識(ヲタクの)があって、それが生かされているので知っている人にとっては読みやすい作品――だと思うんだけど、かなり腐女子寄りだよね。BL要素が強いし、こういう男子がいたらいいよねって欲望がつまりすぎている。テイスト的には少女漫画に近いかも。

記号的な表現も多いよね。ヲタクってこういうものだよね、という表現が強い。ちょっと前のあるあるネタを見させられているような気分になる。だからかな、作中のキャラクターも記号的に見える部分が多い。

胸がない、という記号。

胸がある、という記号。

みたいな。

だから貧乳ネタも、貧乳キャラだったらこういうリアクションでしょ、みたいな空気でやっていたりする。そこが面白くもあり、あざとくもある。

 

男が美形過ぎる

女性陣がかわいい、またはセクシー程度の構成なんだけど、男性陣はカッコ良すぎるよね。設定を盛り過ぎてる。それこそ少女漫画に出てくるような男性キャラみたいに。欠点を含めた万能感がある

頑張り過ぎてギリギリなところに優しい声をかけてくれたり、ヒロインしか気付かない一面を見てキュンキュン(死語)したり、女子の妄想がそのまま具現化しているような錯覚に陥る。そこに気付かないあいだは面白いんだけど、気付くと男性陣のかっこいい(悪い)シーンもポーズ(演技)に見えちゃう。彼のかっこ悪いところを知っているのは私だけ、という女性心理を映し出しているだけに見えちゃう

ポイントポイントはすごく面白いんだけどね。初恋の相手がナコルルと見せかけて今付き合っている女とかね。ネタとして最高じゃんね。

 

ひとりで大丈夫は悪なのか

ここがヲタクに対し手厳しい。

メガネ男子の方がひとりで生きられるタイプということで、それはそれでも良いのでは? そう思っていたんだけど、作品自体は誰かと繋がりを持ったほうが人生は有意義であるという方向へ進みたがっている。だからメガネの弟は兄が付き合っていることを知った時に涙し、そして彼は大学にいるメガネ女子(最初は男子だと思っていた)に声をかける。

この構成がすごく邪魔。

周囲のリアクションが当人を差し置いて進んでいるというところに不快さを感じる。

主人公が自発的に気付いて、それでおめでとうならまだ分かる。でもそうじゃないからまるで主人公の過去が否定されているように見える。彼のこれまでの人生もきっと楽しかったはずなのに。じゃなかったらゲームだってあそこまで上手くはならないでしょ。情熱の矛先を維持しつつ、人付き合いも上手く立ち回る。それだけが人生の正解なんすかねぇ?

 

総括

序盤はノリの良さで楽しめるんだけど、長く続くと悪いところが目に付いちゃう。

ただテンポを落とさずやってるから読みやすいし、ギャグパートもしっかりしているので飽きない。悪いところが多いのに悪くない漫画。

恋愛パートは作者のこうなればいいのにが出すぎちゃってリアリティがないけど、読者に羨ましいと思わせることができたのなら成功だろうね。ぶっちゃけこういうのは共感させたら勝ちでしょ。

タイトルが商業的過ぎるのはストレートに減点かな。読む気が失せるタイトルだ。

 

 

一迅社/ふじた・ヲタクに恋は難しい(1)