『ネコソギラジカル(下) 青色サヴァンと戯言遣い/西尾維新、竹』レビュー

『ネコソギラジカル(下) 青色サヴァンと戯言遣い/西尾維新、竹』レビュー

最終章で最終巻。ミステリー要素は減ったけど、謎の多くは解消された。キャラクターの特徴に絞ってみると面白い一冊。

読み終えた後で裏表紙見るとちょっとなごむ。

 

 

真心を救う

強者を救うという独特な展開。

ラスボスである狐は序盤ですでにまな板の上の鯉。哀川潤を倒した程なので、というか最終なので、それはまあ当然なのだが、しかし若き戯言遣いは助けることを決断、と。

ここがターニングポイントだったかな。

物語の方向性が定まったところだと思う。どうやったら止まるのか、どうやったら勝てるのかという流れを言葉で断ち切ったいーちゃんはやはり主人公なのだろう。まあ人類最強の言い訳もそれはそれで楽しかったけどね。

 

一里塚木の実

忘れがちメガネ。野暮ったいメガネってどんなメガネなの? 男物なの?

細腕アピールが可愛いっちゃ可愛いし、実はふくよかな人なのだろうと想像すると、空間製作を説明するくだりが面白く思える。胸へ意識させて足を踏むってやつ。空間製作というのはつまりミスリード、ミスディレクションを進化させた感じだろうか。この理屈だとおっぱい暗殺みたいなこともあり得るかもしれない。意識をそちらへ集中させておいてナイフで刺す……みたいな。昔のスパイ映画とか時代劇みたいな。いつの時代もおっぱいは強いってことだな。

地味めの見た目と相まって絵になる(映像化する)と魅力あると思う。地味、メガネ、巨乳は三種の神器。まあ巨乳は想像だけれども。

しかし性格はエグいらしく、その前振り(出夢)は見事、戯言遣いが回収。

ちなみに『愚物語』で名前だけ出てくる。

 

エピローグ

戯言シリーズはこれがあるから面白い。大団円に近い終わり方で少し安心といったところか。

依頼者は『世界シリーズ』のオマージュ的な感じかな。知り合いのリンクスは病院坂黒猫ってところか。

戯言遣いは哀川潤にも悪態をつかれる存在へと成長。そしてホームには愛するものが待っている。確率の低いことは、やはり最初に起きた

 

まとめ

さよならミステリー。バトル漫画のような流れ。しかし謎とその回収構造は今まで通り。何よりきちんと終わって良かった。上・中・下、それぞれ371ページでお届け。

会話シーンが本作も良かったんだけど、共同生活がちょいと想像し辛いものがあった。狐さんと一緒に生活? なんか変な感じ。生活感のイメージが沸かない。もっともこの共同生活があるから未来が生まれたわけで、これもまたらしいといえばらしいのか。でもシュール過ぎない? ラスボスと一緒に暮らすって。

真心の方はモノローグで徐々にキャラクターや能力が明かされた感じかな。真似(コピー)ではなく完成(コンプリート)。やはり『ジ・エンド』じゃないか。そしてだからこそ、いーちゃんが数多の事件にまきこまれながら動じなかった理由がわかる。こんな存在を経験したらね。その戯言遣いについても時宮とのやりとりで特性(戯言の)が大体わかる。彼は確かに終わりだろう。操想術師としては。

総じて会話とモノローグで見せるというやり方が非常に上手かった。三人称視点ならともかく一人称視点でこれだけ見せられる作品というのはあまり無いだろう。強いて言えば『涼宮ハルヒの憂鬱』ぐらいかな。共通しているのは主人公の頭が良く言葉も巧み。ライトノベルは平凡普通主人公が多いけど、それ以外のほうが個人的には好みだ。モテる理由もよくわからんしね(平凡過ぎると

細かい謎は少し残ったけど物語としては綺麗に完結しているし、何よりバッドエンドじゃなくてよかった。読んで良かった小説であり、シリーズであり、読み返しても面白い稀有な作品でもある。

 

 

文庫版。新書版はAmazonには無いかも。

 

西東天の師であるヒューレット准教授に知りたい人は『人類最強の初恋』を読めばいいと思う。