Dr.STONE #130 で見る少年漫画の特徴 氷月が仲間になるとどうなるか

Dr.STONE #130 で見る少年漫画の特徴 氷月が仲間になるとどうなるか

過去が『無かった』ことになる。

この展開、ベッタベタだけどしかしオッケー。ここは奇をてらう必要のない流れ。違和感があっても少年漫画なら問題ない。

「仲間」発言にはびっくりだけどね。

 

信頼を大事とするも、心よりも展開を優先

氷月の強さは司に近い。が、立ち位置はマグマに近い。

もともとマグマは長の立場を狙う野心家。

それが今では仲間。これだけなら違和感はない。

問題なのはマグマというキャラクターはスイカを人質に取ったり、ルリを使い捨てにしようとしていた――といういわゆる卑劣なタイプだったということ。目的のためには手段を選ばないタイプ(目的に対し直線的なのがマグマの魅力でもあるが)。それの是非はともかく、そういった感性の持ち主であるマグマを迎え入れるというのはどうやったって違和感が残る。過去を水に流すというのはなかなかできるものではない。嫌悪感を抱くのがまっとうだろう。たとえ相手が改心したと主張したとしてもそれはなかなかに難しいことだと思う。

氷月にも似たような過去がある。ちゃんとしていなかったとはいえ仲間を見殺しにし、司の妹を使って司への不意打ち。これも目的の為なので、そこは良しとしても(展開的には)。その後で仲良くできるかどうかはやはり別である。

が、このDr.STONEという作品はそこを曖昧に描く傾向にある。

過去にいろいろあった、だけど助かる為には彼の力を利用せざるを得ない。だから復活させる。

――というのはわかる。

わかるが仲間意識を持つというのはまた別の話だ。氷月のおかげで助かった。だから過去を忘れて仲良くしようとは普通はならない。

 

しかし、オッケーです

こういう違和感はリアリティの無さが生んだ産物。なので本来は良くない……だけど、それでも氷月が味方になるという展開は有り。

なぜなら氷月が味方(仲間ではない)になるという展開にはグッと来るものがある

この感覚は少年漫画にとってはとても重要なファクターだ。

リアリティよりも優先させるべきものがある。

それができなくて打ち切りになった漫画の方が多い。ゴリ押しも時には重要といえばわかりやすいか。

動けないようなケガを負ったのに次のエピソードでは普通に動けたり。

理論的には間違っているけどこういうものだからと強引にクライマックスに持っていったり。

お前のスタンド能力じゃそれ無理だろってツッコミを言わせない危機感、とか(全部ジョジョじゃねーか!

 

少年漫画における戦闘力

嘘みたいなことを言うと大半の少年漫画はモノローグでどちらが強いかが決まる

氷月とモズ、どちらが強いんだろうってツイートしている人がいたけど、答えは氷月。槍が違うので苦戦するというパターンはあるかもしれないけどね。

モズは氷月を理解できない。

逆に氷月はモズを理解できる。

強さは良く分からないと言っているモズに勝ち目はない。

 

氷月の言うちゃんと、とは

このコマに集約されている。

ファーストコンタクトでの銀狼、日本刀を持ったコハク達への評価と同じ。

敵味方は関係ない。ちゃんとしているかどうかとは役割と能力を理解し、それを正しく行使できるかどうかなのだ。己を正しく使っているのであれば失敗しても殺さない

 

モズの評価はここで決まったんじゃないかな。

この後の会話でちゃんとしていないと判断したかのように見えるけど、ニッキーに対するリアクションですでに確信していたと思う。

ニッキーを侮辱したモズを不快に思ったのかもしれないが。

あるいはその両方か。個人的にはここでの氷月が一番の好感度アップポイント。

にしてもすごいおっぱいだな。

 

イバラ、敗北へ

負けるかどうかは汗でわかる。そりゃあれだけ走れば汗も出るんだろうけど。

要はカリスマ性はなんだよね。カリスマ性が落ちるともうどうしようもない。

おそらくキリサメに裏切られるんだろう。

厳密にはキリサメは頭首に仕えているので裏切りにはならないけど。

 

まとめ

戦闘関連の展開は強引さが非常に目立つ。体操選手だったからという理由で、日本刀での攻撃を避けるような漫画(しかも橋の上で)なので、そこはもう科学パートとすっぱりと分けて考えた方がいい。一般人でも武器持ちなら体操選手に勝てるよねとか、そんな疑問は一切持たないように。

まあほんとは理路整然とやった方がいいんだけどね。後から読み返しても納得できるような作品の方がそりゃあいいさ

でも週刊少年漫画なら許される。テンポ、リズム、勢い、波のある展開、そしてそれを見せつける力。それが今回のDr.STONEにはあった。だから面白い。面白い=正義。それが漫画。

 

 

集英社/週刊少年ジャンプ2019年51号