『クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識(西尾維新、竹)』レビュー
- 2019.01.06
- 小説、ライトノベル
読み終えた後、表紙を見て驚いた。新書版ね。
クビキリサイクルに続いてこちらもミステリーな空気。だけどこちらは殺人鬼も登場。彼の格好が痛いことは、ファッションセンスがやべーことは、この時点ではまだ分からない(はずだ
読めない展開
殺人事件ということで、導入は割と普通。もっともヒロインである葵井巫女子がぶっとんでるので物語としてのスタートダッシュは凄まじいものがある。
彼女は普通のライトノベルに登場しそうなキャラなんだよね。異様に明るくそれでいて主人公に夢中――みたいな。「――みたいなっ!」は後世まで続く名台詞みたいな。もっともキャラとして後に続いたのは殺人鬼の方だけどね。
零崎人識
殺人鬼の少年。伝奇ものに登場しそうなキャラだよね。中二っぽさがやべーわ。
クビシメロマンチストはこのキャラクターの影響が強すぎて推理モノとしてちょっとズレちゃう部分もあるんだよね。それでいて物語を加速させてくれる存在でもあったりするんだけど。
彼は社会的にズレてる。だけど戯言シリーズにおいては数少ない常識人でもあって、だから結果的にワトソン役になることもある。零崎の中でも異端だけど、作中においても異端な存在である。
ストーリー
「鴉の濡羽島」から2週間後、5月の事件。
前作に続いて今作も人が死ぬんだけど、今回はキャラクターが天才というわけでも異能の力があるわけでもない。そういったこともあってもしも本作の事件を調査ファイルのような形で残したら案外普通の事件なるんじゃないかな。
けどその中身は、過程には、異常性がある。そしてその異常事態の原因は主人公によって生み出されたようにも見える。
「おまえは悪くなんかない」
そんなことを思いながら読んでいる時に出てきた哀川さんの台詞。いーちゃんへ向けたものなんだけど、そのいーちゃんには事件を止める力があった。戯言遣いだからね。しょぼい大学生ぐらいはどうとでもなる。少なくとも智恵以外の死は回避できた。つまり哀川潤のこの台詞は事件を止められる立場にあった戯言遣いに言ったことになる。うーん、重い。
葵井巫女子の想いもはっきりと分かるから余計に重い言葉になるんだよね。とはいえ戯言遣いからすれば、殺された智恵の為に動いていたわけで、複雑にして、非常に後味の悪い結末だった。しかし不思議といーちゃんの好感度は下がらなかったりしてね。そこが戯言シリーズの面白いところ。いーちゃんを見てどう感じるかどうかで戯言シリーズの面白さは変わる。
智恵の死が読了後は惜しくもあって、歯車がちょっと壊れただけで人間関係も崩壊した――そんな物語でもあったのだと思う。仲間(フレンズ)内おいては葵井巫女子の存在が一番大きく。けれどその彼女の闇は誰も理解していなかった。誰も彼もが友情によって関係をこじれさせたそんなお話でした。
まとめ
今回も二段落ち。哀川潤が良い仕事をしました。いやほんと彼女がいなかったらオチが弱い上に、いーちゃんの行動に謎が残っちゃうっていうね。しかもそもそものいーちゃんの行動原理すらわからないっていう。人類最強は伊達じゃないね。初対面で蹴ってきたのと同一人物とは思えないね。
とはいえ智恵の為に戦ったという、彼の本心は後に分かったりもするんですけどね。キャラクターとストーリーは一貫しているけど、戯言シリーズは多くを語らない部分が多いのが特徴。
沙咲との初対面だって『零崎人識の人間関係 戯言遣いとの関係』を読まないと正確には分からないからね。佐々沙咲がいーちゃんをとんでもない奴だと思っていたなんて、この時点じゃ絶対わからんわ。
余談だけど、哀川潤の気配に気付いたみいこさんと、それにちょっと感心した哀川潤のシーンがなんか好きです。
こっちも工夫ある表紙。こういう工夫好きですよ。
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