【定年退食】藤子・F・不二雄の発想に追いつくか
- 2020.09.27
- 漫画レビュー
景気の悪化と高齢化社会。これほど相性の悪い(良い)ものもあるまい。
老害はいなくなったほうが良いという考えは、あるいは限界を超えた時に常識になるのかもしれない。未来の常識は過去の常識を塗りつぶす。
『二次定年』という設定が面白い作品でもあったかな。あまり思いつかない設定だと思うんだよね。
定年後も人生は続く
働かなくても人生が続くことが恐ろしい。とか言う世界観を壊すためにも年金の導入は心強い。という設定があるのが現代社会。まあ実際のところそれだけで暮らすのは難しいのかもしれないが。ちなみに年金でお金が余るという生活を送っている人もいたりするので、現実というものの良し悪しは人によって大きく異なる。あるいは平均値を見て判断した方が良いのかもしれない。
ともかく『二次定年』という設定は面白い。
一次では暮らしていけるが二次になると蓄えで暮らして行くしかない。この差が面白い。そして現実的だ。
思うに作者のなかで年金を支給し続ける未来というのは無かったのだと思う。生産性の無い人が年金を受け取り続ける未来を描けなかったのだろう。
仮に定年後に40年生きるような時代が来たとしたら、その40年間の生活費を誰が払うのだろう。国が払うというのが藤子・F・不二雄が生きた時代のことだったのだろうが、しかしそれだけのお金を誰かが稼ぐのだとしたら、それは景気の悪化を免れない。年金を打ち切るという策が必要になってくるだろう。
ちなみにアメリカでは年齢に関わらず問題を起こした者の年金を早い段階で打ち切るという制度もある。カットした分、国は潤うとも言える。
総理のありがたいお言葉
国の代表(?)が改正でより良いものにするのは当然のこと。
それ以上の生産人口をわが国は必要としません。
それ以上の不要能力をわが国はもちません。
この言い回しが結構好き。善悪とか関係なく、この言い方が。
「保証を打ち切ります」と続くんだけど、生産性の無いものには国からは何の支援もしないと突きつけられたようで、多くの読者は冷たいというか、この首相(だったと思うが)の発言に気分を害したことだろう。
ただこれお金を増やせる人間にとっては意外と悪くない制度のようにも思える。重要なのは仕組みを理解することだったり、世界の変化を見極める目だったりする。当然この世界でも得をする人間はいる。リーマン・ショックやコロナで得をした人間がいたように。何にせよお金を守る時代はとうの昔に終わっている。
とはいえいきなり改正されて保証を切られた人にとっては不運とも言えるだろう。
ちなみにサムネは席を譲らされた主人公と友人のその後のカット。これね、普通の漫画の登場人物だったら怒ってるか嘆いているか、とにかくネガティブな行動を取ると思うんだよね。それをこの構図で終わらせるのは単純に凄いと思う。暗闇が待っていると思う人が大半であるなか、光に向かって歩いている。ようにも見える。
嫌なことがあっても前を向いて歩くしかないのだ。
作品とはあまり関係ないが、ロボが主人公を気遣うシーンにブラックユーモアのように観えた。
人は彼らを気遣わないが、ロボは気遣う――みたいな。まあ考えすぎだと思うが(偶然そのようなシーンが描かれていただけのことだろう
小学館/藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>
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