【金剛寺さんは面倒臭い】読むのも面倒臭い漫画
- 2020.09.22
- 漫画レビュー
世界で一番嫌いなタイプの漫画である。嫌いなことを寄せ集めた結果生まれたような作品といってもいい。
ネタバレした方が返って読みやすくなる可能性があり、なぜふたりの関係がハッピーエンドを迎えるのか、その過程を楽しむぐらいでちょうど良いのかもしれない。
感想も嫌いな理由をベースに書いた方が良いように思う。嗚呼、感想を書くことすら面倒臭い。
全部説明する
ラブコメなのかラブロマ(ラブロマンス)なのかわからないが、その過程……つまりは行く末を全て説明する。それもナレーションで。
両想いの男女がくっつくこと、それはとても良いことである。漫画としてもとてもとてもスタンダードだが、そうなることを事前に読者に説明するのはかなりのアウトローだ。
33話などは特に酷い。出会い、幸せ、おっぱい、幸せの絶頂……など、すべて公開されている。アイカツならぬネタバレオンパレードである。
絶頂の理由も事細かである。性行為――これ以上の絶頂はあるだろうか、いやあった(出産)といったように過程の全て、あるいは未だ起こっていない未来をも描いている。子供の成長から老後、それらすべてが絶頂を超えた絶頂であり、さらに77歳になればそれ以上の過去最高の絶頂を体験することになる。と説明されている。
死後も描かれているので、いわばこれはふたりの人生の教科書といっても良いだろう。
蛇足が存在する
本来であればふたりが付き合い、そしてエピローグで結婚して終わる。これこそがクライマックス、グランドフィナーレの適切な流れである。
しかしこの漫画、恐ろしいことにエピローグの後も続くのである。
まだ続くのかよ。そりゃもう蛇足じゃろ。って思っていたら、
本当に蛇足(物理)が出てくる。そんなくだらない漫画である。
蛇足の事前告知。これには読者もさぞ驚いたことだろう。
テーマを語る
終盤のことである。この漫画は恐ろしいことにテーマを見開きで読者に伝えてきた。
テーマとは本来読者が各々(勝手に)感じ取るものだ。
それをこれ見よがしに見開きで、それも数ページ渡り公開しているのである。
痛い。
こういうのは作者へのインタビューなどの際、ファンサービス的な意味合いを込めて答えるものである。応えるものである。
それを自ら主張するとは、なんたる暴挙。
本編とは大きく関りの無い物語が多い
主人公とヒロインがメインであるにも関わらず関係の無い物語を差し込んでくる。過多に差し込んでくる。
あまりに多すぎてむしろ本編とは大きく関わりの無い物語の方がメインだと勘違いする読者もいるに違いない。
説明とは
本来いらないものである。状況はもちろん、キャラクターの設定などは性格から導き出された行動で語れば良いのだ。正義であれば正義の行動があり、悪には悪のそれがある。
『面倒臭い』であればそれが個性として5秒(体感2ページ)でわかるように設計されている(はずだ)。それが漫画だ。読者はそれを無意識的に感じ取り、理解し、ページをめくるのだ。電子書籍であればPCならクリック、スマホやタブレットならタップ、フリックだが……などとそんな説明をする者がいたらそれは正しいが、それはそれで面倒臭い。つまりはそういうことなのだ。
故に漫画の大半は説明シーン、ナレーションなどは減っていく傾向にある。J……なにかの1部や2部では主人公の行動、吸血鬼の能力などでさえナレーションに任せていたが、3部頃になるとキャラクターのモノローグで表現する機会が増えた。鬼を滅する漫画なども同様だ。剣士の型(技)がなにかと多いが、気付けば型の説明は省かれていた。このように物語上にあるキャラや設定というものは話が進むにつれ簡略化され、無駄が省かれ、結果スリムになり、読者にとって読みやすいものとなるのだ。
しかしこの漫画はその逆である。無駄の寄せ集め、バーゲンセール。どのエピソードも無駄で構想されている。ここまで説明して良いのかと感心……もといドン引きしても不思議ではない。
読むのが面倒臭い人のためのまとめ
・説明シーンは邪道である。どうしても入れたい場合は最小限に抑えよう。増やす努力をするなんてもってのほか。
・物語の基本は本編を主軸にして進めることである。時に横道に逸れることもあるだろう。だが横道をメインにする努力なんてありえない。ぶっちゃけありえない。
・テーマを知ることでショックを受ける読者もいる。訊かれてしょうがなく答える程度にしておこう。
・蛇足は読者からも敬遠されがち。もっと早くに終わっていたら良かったのに、そう思われることもしばしば。
・エビフライ。
表紙ですでにネタバレしている。そこもまた面倒臭い。
単行本はおそらく7巻で終わる。なおこれは宣伝とは大きく関わりのない情報だ。
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