ドラマ『まんぷく』批評っぽい感想・レビュー

ドラマ『まんぷく』批評っぽい感想・レビュー

NHKの連続テレビ小説。1話あたりが短いので見やすかった。逆に言うと長かったらけっこーキツかったかも。

つまんないわけじゃないけど、時代錯誤的な要素もあって共感と疑問が交互に襲ってくる感じ。

 

 

パターンが同じ

高齢者とお子様にとっても見やすい仕様。

チキンラーメン、カップヌードル(作中では名称は異なるが)などが特に分かりやすい。しかし働き方として共感できたのはチキンラーメンまでかな。仕事に対する取り組みが良く言えば熱意はある――が、悪く言えば独裁的過ぎる。

 

家庭には仕事を持ち込まない宣言→結局持ち込む

福子の母にそのことを言及される→言うことを聞かずあやふやにする

家で仕事をしない息子に対し仕事に対する考えを説く→息子が家でもやる気を出して満足

 

萬平は良い発明家ではあると思う。思うがしかし父親としては微妙だ。また上司としても部下に対し明確なビジョンを伝えることができない。それは自分でも分かっていないからで、古い作品にありがちな『直感』というものに頼っているからだ。明確な理由はないが、直感的にそう思う。だから付いて来いという見せ方は古いタイプの人間にありがち。

こういった流れは見るのが辛いし、これが正しいとする働きや見せ方はもっと辛い。少なくとも会社で働いた分で成果がでなかったとしたら、それは会社の方針が悪いのであって、いち社員が悪いわけではない(=家でも働くことが正しいといった見せ方はおかしい)。

 

成功が前提の作品

『まんぷく』は日清食品の成功が前提となっていて、その上で逆算して苦労話を描くというのが基本構成になっている。苦労したから報われると随所に主張してくるし、布石も必ずといって良いほど成功に関するもので、ふとした気付きや違和感など、それぞれの正体が発明のキーになることがほとんどだ。

凄い人はこれだけの努力をしているんですよ――というアピールが成功を前提にしているので後出しジャンケンのようにも見えるのだ。

失敗することもあるが、それも成功が前提の試行錯誤。実際の発明家もそういった側面があるので一概に否定はできないが、作品のビジョンが定まり過ぎている点でリアリティが無いように思う。時間をかけて作ったものは必ず売れるといった展開が多いが、実際の日清食品は良い歴史の集合体ではない。時間をかけて作ったものが売れず、そして消えていったといった例もある。そこを描かずに見せるのは酷くアンフェアだと思う。

ヌードルを100円で売るという展開などが良い例。予想より売れなかった時期があるが、最終的には萬平の言い分通り『100円』で大勢に買ってもらえたというオチで、それ自体は別にいい。ただこういう結末を用意するのであれば、商品化したものの売れなかったケースを見せるべきだ。良い部分を編集して見せているようで、日清食品の宣伝のようにも見えてしまう。

 

まんぷくラーメンの偽物

偽物というかパチもんといった感じだったが。

あのエピソードの面白いところは萬平陣営の視点で見るとパクった側を見て腹が立つ。怒り狂いそうになる。苦労して作ったものをパクリやがってという気持ちになる。

しかしよくよく考えてみるとまんぷくラーメンの元ネタであるチキンラーメンが実はパクった末に生み出された商品である可能性もある。売れたもの勝ち、特許を取ったもの勝ちという理屈であれば、最初に井戸を掘ったものが評価されるとは限らない。歴史は勝者が作る。電球を発明したのがエジソンではないように、事実と史実は違うものと認識したほうがいい。

稀にマーケティング手法として凄いみたいなことを言う専門家がいるが、後からならなんとでも言える。そんなものは売れた漫画の凄さを語るアホと同じである。

 

良かったところ

ものづくりが上手く行く過程が面白い。そこが気になって結局最後まで見てしまった。

そしてふたりが幸せならそれでいいのだろう。そう思えたのも確かだ。

 

 

スーパーではめちゃくちゃ宣伝してたよね。音楽もドリカムとかだったりして。