『零崎曲識の人間人間/西尾維新』感想・レビュー
- 2019.02.15
- 人間シリーズ
「零崎を始めるのも、悪くない」
零崎一賊三天王にして最年少、『少女趣味(ボルトキープ)』こと零崎曲識の物語。
思った以上に強く、思った以上に変人。前振り以上のキャラクターでした。悪くない。
零崎曲識
名前はちょこちょこ出ていたのですが、今作が初登場。天然なのか切れ者なのか、そのわからなさがチャームポイント。感情が表情に出ないけど、内面にはしっかりと家族愛があり、情熱もあるキャラクター。人識との接点は薄いけど、良き理解者のひとりだったような気もする。
4つのエピソードがあったのでそれぞれ分割して書きましょうかね。
1.ランドセルランドの戦い
『少女趣味』ってそういう。
総角三姉妹が倒される過程が前振りでしたね。どういった条件なのか、それを推理しながら読むのも面白い。ぶっちゃけ読者用のキャラクターだけどね。出夢くんの補足説明がなかったらただの雑魚として処理されていただろう。
曲識が『音使い』として2つの能力を有していることがわかるのも彼女達のおかげ。長距離と短距離の喩えが三姉妹(次女)の最大の功績かもしれない。良い喩えだった。
双識と子荻、人識と出夢の会話パートも面白かったですね。
「むしろ私にしてみれば、子荻ちゃんの価値は制服にしかないといっても過言ではないのだ」
冒頭のこれがひどかった。策士も変態が相手では分が悪いらしい。
2.ロイヤルロイヤリティーホテルの音階
「案外軋識くんみたいなタイプが、一番ロリコン道に走りやすいんだぜ?」
「俺は生涯! 少女を愛することなんかないと誓うね」
軋識の見事なフラグ回収講座。三天王いいよね。仲良くて。語呂は悪いけど。
幼さの残る哀川潤が特徴的なエピソード。哀川潤は最初から哀川潤といったところか。負けそうになってもあのテンションでいられるのが彼女の強いところ。メンタル最強は伊達ではない。
明楽はここで初登場。ぷに子も。ぷに子は刀語を思い出すよねぇ。
3.クラッシュクラシックの面会
人識と伊織のその後。ふたりの関係を楽しもう。
あとは罪口の拷問器具が良かった。主に人で作られた武器というのがポイント。それが身内、友人などであれば心的ダメージは増すだろうという見解も面白い。このネタだけで一冊の小説が書けると思う。
4.ラストフルラストの本懐
これはネコソギラジカルの後に読むのがオススメ。真心や右下るれろの登場もそうなんだけど、なにより零崎一族がどのようにして……というのが補完されている。
でもこれ真心を止められるなら右下を軋識に殺してもらえば良かったんじゃなかろうか。
ここで曲識はようやく哀川潤と再会。この後でネコソギラジカルを読むのも良いと思う。哀川潤が『曲識』の名前を出しているから。
『寸鉄殺人(ペリルポイント)』がさりげに評価されてましたね。登場してないのに強いことが証明されるのは西尾作品ではよくあること。
零崎曲識について
『少女趣味』な点では異常者なんだけど、社会に溶け込んでいる部分も見れて、これはこれでまともにも見える。しかし零崎としては異端。少女しか殺さないという誓いが成立している時点で例外的な存在と言えるだろう。この理屈だと伊織の我慢強さは驚嘆に値するレベル。
逃げの……と言われていたけど、本人も言っていたけど、総じて見るとただただマイペースといった感じ。人識との会話とかひどいもんね。相手の言い分とかほぼスルーだし。でもお互いちょっと似ているっていう。
強さ的には作中の零崎のなかでは最強に見えた。右下るれろと拮抗するレベルで、軋識ですら抵抗できず操るスキル、さらには音での衝撃波。さすがに強すぎなイカ?
新書版はトレーディングカードが入ってましたね。
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