『零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係/西尾維新』感想・レビュー

『零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係/西尾維新』感想・レビュー

「それでは、零崎を開始します!」
人間シリーズ完結編。
関係四部作。
人間関係はどれから読んでもいいそうですが、『零崎双識との関係』の次に読むのがオススメ。

 

萌太からの依頼

哀川潤が請負人として活躍――とその前に殺人鬼ふたりが乱入といった感じ。このシリーズって人識以外が活躍することの方が多いよね? 今回も主人公は崩子ちゃんって感じ。ただし家族問題を取り上げることで、零崎人識がそれに対し何を思い、何を考え、そして行動するかが物語の焦点にもなっている。そこに気付くかどうかで作品の見方は変わってくるだろう。

普通に読むと六何我樹丸、闇口憑依、石凪砥石に目が行くだろう。そして崩子ちゃんに感動するだろう(それは別にいいが

あとは『モチベーション』かな。テーマの1つみたいに出てくるワード。才能や能力よりよっぽど大事かもしれない。これが無いと何もできないと言っても過言ではないからね。これは殺し名だけじゃなくて、一般ピープルにも言えることだろう。

 

シリアルをつなぐコミカル

本筋がシリアスだった割にはギャグパートが多め。人識と伊織、ふたりの殺人鬼が哀川潤を狙うという時点ですでに面白い。もっとも哀川潤の強さを踏まえると案外笑えないんだけどね。哀川潤は真心にトリックが成立しなくなるとかどうとか言ってたけど、哀川潤の存在がまさにそれ。戯言シリーズで使われたギミックの大半を素通りできそうだし。密室トリックなんて彼女の前じゃ何の意味も無いでしょ。ミステリーとの相性はその実けっこー悪い。

人識の回想もややコミカル。澪標姉妹とのやりとりは『ネコソギラジカル』からはちょっと想像し難い。それぐらい面白い内容だった。しかしフォローするつもりはないが、女子のパンツでにやけるのは悪いことではないと思う。そもそも人識はにやけてないのだけれども。回想といえばドクターとの会話もポイント。なぜ園樹が人識を気にしていたのか、ここで初めて分かる

後は伊織と憑依のやり取りかな。まるで素人→素人以下→素人未満→劣化素人。この流れが最高だった。憑依さんってばけっこー言葉が巧み。

初ちゅーじゃないかもと知ったときの哀川潤がちょっとかわいい。

 

総評

関係四部作の中では一番好き。戯言シリーズと話が繋がってる部分が多く、それでいて人間シリーズを読んだ上で読むとしっくりと来るものがある。崩子と萌太の関係、萌太といーちゃんとの関係、そして人識と伊織との関係。そういったところに注目せざるを得ないほどの魅力が本作にはあると思う。

六何我樹丸の発言や行動なども見どころの1つで、勝利と強さは比例しないことがよく分かる内容だった。哀川潤をして次やってもお前が勝つと言わせる程度の強さが彼にはあるがしかし、最強はやはり哀川潤なのである。ちなみに六何我樹丸の名は最強シリーズにおいても登場し、その評価の高さが伺えた。想影真心、石丸小唄などと比肩し得るキャラクター強度の持ち主。

崩子が啖呵を切るところでの感動、去る人識、追いかける伊織、これらの流れも良かった。この流れの上で『戯言遣いとの関係』を読むのが面白い。

 

 

人識は直木飛縁魔に先に出会った上で、我樹丸の強さを理解しているので、やはり『匂宮出夢との関係』の後に読んだほうが良いと思う。