『ネコソギラジカル(上) 十三階段/西尾維新、竹』レビュー
- 2019.01.14
- 戯言シリーズ
狐と十三階段が本格参戦。ミステリー要素は無くなったけど、謎は多い。次がどうなるのかという過程を楽しもう。
キャラクターは絵本園樹が面白い。メガネと白衣と水着とか、ハイセンス過ぎぃ。
新書版は表紙がいいですね。身体のラインがなめらか。
攻撃されるのが自分なら
さっそく攻めてきた十三階段なんだけど最初に狙われたのはいーちゃんではなくみいこさん。
これはある種の成長物語。自分が攻撃されても気にはしないが――自分の痛みには鈍感だが――身内のこととなると話は別。そのことを戯言遣いは理解する。自分が傷ついた時に周りがどう思うか、そのことを知る。
崩子ちゃんとか、今までそういうシーンを何度も見てきたんだろう。それなら「セックスフレンド」発言も納得。むしろ可愛いもんだ。
変人、十三階段
出夢くんがいたこともあってある種のバトル集団的なものを連想しちゃいそうになるが、実際はただの只者ではない変人集団。
みいこを狙った奇野頼知、アンチいーちゃんのノイズ、ドクターの絵本園樹、そして出夢の代わりである澪標高海と澪標深空。とにかく癖の強い方々。と同時に代替えがし辛いキャラクター。
キャラクター。
狐さん視点で言うとキャラクターというのは適切な表現で、世界がひとつの物語であるならば、必要なのは物語を進めるキャラクターなのである。今作では全員出てはいないけど、それぞれに役割があるということはこの時点ですでに想像できる。それはただ強いってことより厄介だ。
メイドと
「ご主人様」というダイレクトアタック。しかも従順。更に言うとそのメイドは実のところひかりさんではない可能性が大きい。そう考えると非常にいい。
従順といえば崩子ちゃんも良い味だしてましたね。主従関係とか結構好き。
登場人物は今回も多かったけど(過去最高か?)、それぞれ個性が強いからか馴染みやすいというか、覚えやすい。進行の妨げにはなっていない。むしろ読みやすくなってる。
見せ方としては出夢くんが上手いかな。いーちゃんの推理力と出夢の台詞から出夢の性格や過去が見える。おせっかいでのお人好し感と零崎人識と知り合いであった可能性の示唆、そしてその零崎を狐さんからかばった可能性も。
それでも今回のMVPは絵本さんだけどね。格好もそうだけど、病んでる具合がいい。取り乱し方と相まって凄くいい。絵本さんは、コミュ症です。って感じ。最初はカッコ良かったんだけどね。後から読み返すとそのカッコいい部分が面白くなる。
まとめ
少なくとも推理小説ではない。ただ見せ方や布石の回収方法はミステリーっぽい。これはもう作者の癖みたいなものだろう。そう考えると十三階段自体がミステリー要素のオルタナティブとも言える。
狐とのやり取りでいーちゃんが今までどういったことをしてきたのか、それが明確になっていくのも面白い。結局のところ敵の方がいーちゃんをよく知っているし、何より狐といーちゃんは似ていることが少しずつ分かっていく。もっともいーちゃんの方がペースが早いので異常性も上なのだろう。第三者の視点だとこういった部分はわずかなやり取りでも発覚するんだけど、戯言シリーズはいーちゃん視点だからね。いーちゃんのイカれ具合が分かり辛い。
ちなみに人間シリーズでは哀川潤と玖渚友がいーちゃんの異常性に触れていたし、佐々沙咲も初対面の頃にとんでもないのと出くわしたとモノローグで語っている。狐はそのことを言葉にしているに過ぎない。戯言シリーズでこれまで起こったことはいーちゃんの周りではよくあること。
こちらは文庫版。
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